「場」の制約は飛躍的に小さくなる

2011.06.06

今後、回線のブロードバンド化に伴って回線容量が増大する、あるいは圧縮技術が進展することによってこの「場」の制約は飛躍的に小さくなると予想されますが、現段階では、少なくともユーザーの感じるストレスを最小限に抑えられるようなサイトづくり(これにはサイトへの入力の手間やサイトの見やすさも含みます)を実現することが不可欠といえましょう。リアルワールド店舗とオンラインの両チャネルの組み合わせによって顧客への訴求を行うアプローチをとるにあたっては、それぞれのチャネルが顧客ニーズにきちっと応えられるようなサービスレベルを達成している必要があるのは言うまでもありませんが、それ以上に大事なのは両方のチャネルが一貫した思想に基づいて運営されていることです。ブランドとは顧客に対する約束であり、ゆえに同じブランドのもとで展開する両チャネルおける顧客への訴求価値が統一されていることは極めて重要です。統一した基本思想を貫くため、チャールズ・シュワブは九八年一月にオンライントレード専門のeシュワブとリアルワールド中心に展開してきたチャールズーシュワブを併合し、店舗での取引手数料をそれまでの六十五ドルから一気にeシュワブでの提供価格、二十九ドルに引き下げるという英断をしました。当然のことながら、大幅な減収(約一億二千五百万ドル)が見こまれ、株価は一時的には四十一ドルから二十八ドルにまで下落しましたが、顧客発想に根ざしたこの価値提案はすぐに顧客の高い支持を受け、一年半で顧客数がI・五倍以上に増加し、結局減収分はたった十四ヵ月ですっかり取り返してしまいました。顧客への約束にこだわったチャールズーシュワブは、結局は顧客の心をとらえることに成功し、ブランド価値を上げることになったのだといえます。すでにリアルワールドにおいてブランドを確立しているクリック&モルタル企業がeブランドを構築するにあたっては、相乗効果の最大化を目指すことが成功のカギとなります。クリック&モルタル企業の強みは「誰でも」、「どこでも」、「いつでも」そのブランドに触れることが可能な環境づくりをすることで、徐々にeロイヤルティを醸成していけることです。顧客マインドへのブランド定着の前提として、ブランドとしての明確な差別性の打ち出しは必須であり、ブランドアイデンティティをきちっと定義することは極めて重要です。ブランド体験をする全ての顧客に対する一貫性ある訴求に加えて、ブランドの鮮度アップへの取り組みは重要な課題となります。