マンガと権利の問題

2011.04.21

マンガ界では常識の原作者・マンガ家システムを、いまさら法廷で定義するのも滑稽な話であるが、これはマンガ原作が映画やテレビドラマの脚本ほど定型を持っていないせいでもある。プロットの殴り書きがあるだけだったり、細かく背景まで指定したり、ときにはマンガ家とのディスカッションで決められたりと、出版物としても定義しにくいからだ。他方、マンガ家は、どんな原作でも想像力を膨らませて、自分の世界観のなかで具体化させていく。ときには原作を逸脱していくことすらあるのだ。水木への反訴でいがらしが対立したのがそんな点で、「ストーリーはいがらし側でつくったもので、原作は参考著作物。また、マンガの絵を使うのはこちら側の自由」と主張した。ここでマンガ家は、「自分の絵の権利は、絵を書いた当人にある。ストーリーの附帯しない絵そのものの使用は自由」と主張している。感情的にはもっともだが、『キャンディーキャンディ』という作品が先にあり、著作権者は2人という契約がある。そして、明らかに作品の登場キャラクターだと第三者がわかるイラストを書いて利益を得る場合はどうなるのか。もしこれが、著作権者がひとりなら、なにも問題はない。せいぜいが出版元の許諾を得ればいい程度である。そこで、著作権のありかをめぐる争いになってくるわけだ。法廷では、ストーリーー作成の経緯について両者の主張が続けられた。いがらしは「原作の表現があまりに抽象的で、私か膨らませるしかなかった。その作業は楽しかったが、大変だった」とストーリーづくりにも関わったことを述べ、水木は「相手にストーリーについて指示されては、原作者として仕事にならない」と主張した。判決は99年2月に出され「連載マンガは、原作の二次的著作物にあたる」と判断された。キャラクターの作画をマンガ家が創作したとしても原作の二次的著作物であり、キャラクター商品や画集にキャンディを登場させることは連載マンガの作画の複製にあたる。したがって、原作を原著作物とする原著作者の権利(著作権法二八条)を有するというもの。そのため、原作者の同意を得ずにキャラクターを複製し配布することが禁じられた。これを不服としたいがらし側は高等裁判所に上告し、2000年3月に結審した。その結果は控訴棄却となった。人気マンガ、とくに『キャンディーキャンディ』のようなクラシックキャラクターの商品化許諾を得るときは、原作者とマンガ家の両者への充分な配慮が必要だろう。このような訴訟はクラシックキャラクターの人気凋落を招くだけでなく、その後、著作権者がトラブルを嫌って商品化そのものを許諾しなくなる可能性もあるのだ。その結果が海賊版業者のひとり儲けとなっては、元も子もないのである。
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