流行の宝石がいずれは飽きられ、ファンシーグッズに成り下がってしまうのは流行品にとりついている運命です。どんなに素晴らしいデザインであっても、隣にいる女性がまったく同じものを身につけているのを見た瞬間、百年の恋も醒めてしまいます。自分のファッションに、主張やこだわりを持っているご婦人ならなおさらでしょう。「あんな人が私と同じネックレスをしてるなんて許せない!こんなもの、もう二度と身につけないわ」と怒りだすに違いありません。大量生産の宝石が「理想のジュエリー」になりえないならば、特別にデザインされた宝石の中から探すしかないことになります。が、特別にデザインされた宝石には、実は二つの種類があるのです。一つは宝飾メーカーやジュエリーデザイナーが独自に企画したもの、世間ではデザイナージュエリーと呼ばれる宝石です。メーカーやデザイナーが自由な発想でペーパーデザインを描き、大量生産の宝石とは味わいの異なるフォルムにしたものです。この種の宝石は価格も人気も高いようですが、個別に、具体的なエンドユーザーを想定して制作されたものではありません。デザイナーの頭に浮かんだイメージを造形化していく過程では、それを使用するであろう抽象的な女性像があるだけです。特別にデザインされたデザイナージュエリーとはいえ、あなたに合わせて作られたのではなく、デザイナーの嗜好に従って作られた作品に過ぎません。つまりデザイナージュエリーの店にしろ、工芸作家の創作展にしろ、ショーケースに並んでいる品物はある特定の女性のために作られた宝石ではないのです。これでは大量生産の宝石と同じように、買い手が出来上がった宝石に妥協することを求められています。特別にデザインされた宝石ではあっても、この場合の“特別”というのは特別な素材を使用している、または特別企画の商品という意味か、あるいは著名なデザイナーの作品という意味でしかありません。