動画投稿サイトを使って商品プロモーション

2011.03.31

サンフランシスコの坂道を色とりどりのスーパーボール25万個が転がり落ちる映像が、YouTubeにあります。英国ソニーが液晶テレビ「ブラビア」の画像のすばらしさを宣伝するために制作したテレビCMです。商品や人はいっさい登場せず、ナレーションもありません。ただボールが転がるシーンを撮影し、BGMをつけただけのものですが、その映像からはストーリーが浮かび上がり、見る者の心に強烈な印象を残してくれます。このような映像だけに、誰かがさっそくYouTubeに投稿しました。元がすばらしいだけに、パソコンの小さな再生画面でもその感動が皆に伝わったのだと思います。視聴数はぐんぐん上がり、パロディー映像が登場するまでに至りました。これにより、ブラビアのブランド名はネットユーザーの間でグンと高まったことでしょう。しかし、これで終わっていたのでは、ユーザーが勝手に火をつけた、企業側が意図しない偶然の産物であり、ここで特筆すべきものではありません。これには続きがあるのです。ソニー自身がCMのメイキング映像をYouTubeに投稿ソニーあるいはその広告スタッフは、YouTubeに動画の削除依頼を出すどころか、このムーブメントを利用して次の一手とも言えるプロモーションを展開しました。このCMのメイキング映像をYouTubeに投稿したのです。強烈な印象を伴った映像の余韻を残したまま、今度はその作品の舞台裏を見ることができたわけですから、一連の動画が伝えるメッセージは人々の内奥に確実に届いたことでしょう。映画のDVDで本編を見終わった後にメイキング映像を見て、さらなる満足を確信したような感じでしょうか。この例でも、冒頭でご紹介したCanonRockのようなCGM特有のクチコミ効果が、その威力を発揮していることは言うまでもありません。人々を感動させる秀逸なストーリーをもった印象的な映像がCGMのクチコミに乗ったことで、制作者も意図しない展開になったのは偶然としても、メイキング映像提供という機知に富んだその後の対応が、クチコミ効果をさらに増幅させたことは容易に想像できるでしょう。ソニーのような大企業にしても、テレビCMを作っている広告会社の人にしても、これまでマス・マーケティングの世界の論理にどっぷりとはまって活動してきたわけですから、まさか動画投稿サイトがきっかけで今回のようなムーブメントが起こるとは、夢にも思っていなかったでしょうし、実際にネットのクチコミがどこで火の手を上げるか予想するのは極めて難しいものです。しかし、彼らは火の手が上がるやいなや、マス・マーケティング型の脳をクチコミ・マーケティング型の脳に切り替えて対応したからこそ、成功したのだといえましょう。
[参考サイト]
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