レコード通販はちょっとしたブーム

2011.06.21

レコード通販はちょっとしたブームだった。CBSソニーの通販子会社ファミリークラブを筆頭に、ビクター・ファミリークラブ、さらには複数の通信教育会社までがレコードの通販広告を新聞に出稿していた。七〇年代に入って、そろそろ居間というスペースを持てるようになってきた私たちがまず購入したのはステレオ装置だったが、肝心のソフトの知識については弱かった。とくに、知のステータスだったクラシックが苦手だった。指揮者はだれがいいのだろう、どこのオーケストラを選んだらいいのだろう。どこからどこまでの曲を揃えたらいいのだろう。でも、レコード店へ行って店員さんにじかにたずねるのは恥ずかしかった。したがって、この時期のあるべき最良のレコード売り場とは次のような売り場だった。「何でも聞いてください、店員の私もお客様も互いに顔は見えませんから恥ずかしがることはありませんよ。ご希望は何ですか、交響楽ですか。それなら、『これとこれとこれ』だけのLPを揃えておけば、知らない人はあなたを一人前のクラシックーファンだと誤解してくれますよ。とりあえずの支払いは10回分割の1回分でけっこうですから、いますぐ、ぜんぶお持ちになったらいかがですか。あ、ぜんぶは重いですね、すぐ配達しましょう」この最良の売り場をそっくり再現したのが、レコードの通信販売だった。「恥ずかしくない」